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うしおばさんの雑記帳

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2019年 05月 12日 ( 1 )

牛後俳句とエッセイ(第13回) 牧開き空と牧とはちがふ青

牧開き空と牧とはちがふ青  鈴木牛後


(まきびらきそらとまきとはちがうあお)

「楽でもうかる酪農をやろう」


今から22年前にダンナが私に言った言葉です。

私は農家になりたくて大阪から北海道に渡りましたが、野菜農家になりたかったのです。酪農での就農は全く考えていませんでした。それは、とてもきつくて辛い仕事じゃないかと思っていたのが理由です。

でもダンナは、「放牧して生産コストを低く抑えれば、楽でもうかる酪農も夢じゃない」と言ったのです。そして「野菜農家は農繁期は本当に休みがないよ。その点、酪農家には今はヘルパー制度があって休めるし、冬にも出稼ぎに行かなくていいし、それに放牧は楽なんだよ」と続けました。

そうか放牧は楽なのか。

………だまされました。

今でこそ楽な部分もありますが、就農当初は40頭の初産牛がほとんど放牧未経験で、放牧に行かないし帰って来ない。席から出ないし席に入らない。脱柵はするし行っても草を食べないで鳴いてばかりいる。人間が要領が悪ければ牛も要領が悪く、経験もなければ知恵もなく、力任せと全力疾走という日々でした。

放牧のマニュアル本では慣れるのに数ヶ月と書いてありましたが、うちでは本当にスムーズに放牧できるようになるのに3年かかりました。

でも、今ではそんな苦労も昔話になりました。
「楽でもうかる」というのはひとまず置いといて、放牧はやはり良いものです。山の斜面を牛を追って上り下りするのはアルプスの少女ハイジになったようで気分が良いし、市街地が一望できる頂上からの景色は最高です。牛を迎えに行くと、ひんやりした朝の空気の中、眼下に雲海が広がっているのが見えたり朝日が昇ってくる瞬間が見られたり、夕日の美しさにうっとりしたり…。

さっきは、ダンナにだまされたと言いましたが、牛を追って山を下っていると「やっぱりこの仕事が好きだな。放牧が好きだな」と思っている自分に気が付きます。

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by usiobasan2016 | 2019-05-12 10:06 | 牛後俳句とエッセイ