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うしおばさんの雑記帳

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2019年 05月 19日 ( 1 )

牛後俳句とエッセイ(第14回) 牧開き牛を荒息ごと放つ

牧開き牛を荒息ごと放つ  鈴木牛後


(まきびらきうしをあらいきごとはなつ)

「牧開き」というとのんびりした響きですが、実際の放牧初日はそんなものではなく、バタバタです。

放牧初日。出す準備に出入り口の片づけを始めるともう牛たちの咆哮が牛舎に響き始めます。悲鳴のような鳴き声です。

ああ、うるさいと思いながら準備を終わらせ、いざ牛を放そうとすると、放牧行きたさに牛の気がせいてチェーンをひっぱるひっぱる。で、ナスカンをなかなか外せなくて指を挟んだりして、ダンナの怒鳴り声が響き、やっと放すと、半年の繋ぎ飼いで足腰が弱りよろよろと、こけつまろびつしながらも走る牛、転ぶ牛、逆走する牛。

放牧地に行っても、疾走して端まで行き、また牛舎に走り戻り、あっちこっち牛同士でどつきあいをし、土に体をなすりつけ、興奮の限りを尽くします。

牛舎は牛舎で、分娩が近いからとお留守番になった牛が自分も出せと鳴き叫び、最初は出してもらえない放牧未経験の若牛も何だか分からないけど鳴き叫び。それが初日です。


残さるる鎖の重さ牧開き 牛後


そんなこんなで混乱を極める初日ですが、2日目になるともうみんな落ち着いて放牧に出かけます。たった1日で、牛も人間も半年前の記憶を取り戻すのですね。


さて初産牛は、育成のとき公共の預託牧場で放牧経験はあるのですが、公共牧場は出しっぱなしです。でも搾乳牛は朝と夕方1日2回、牛舎に帰って乳を搾られなければならなりません。この1日2回の出し入れに慣らすのがなかなか大変なのです。

未経験牛は毎年10頭前後いて、全部いっぺんに出すと収拾がつかなくなるので、1日2~3頭ずつ出します。そして、その2~3頭が慣れると次の牛を出す、というふうにだんだん増やしてゆくのですが、これがなかなか時間がかかります。

でも、就農当初の全頭初産牛で全頭放牧未経験の時と違って、ベテランのお姉さん達に少しずつ混ぜていくのは楽なもんです。人間が躾けなくてもお姉さんが、どうしたらいいか分からなくてオロオロしている若牛を、どついて躾けてくれますから。

そして放牧もいきなり全て始めるのではなく、慣らし放牧といって時間放牧をし、そして昼間だけ出し、最後に昼も夜も出すというふうに段階を踏んでいきますから、なかなか時間がかかります。

放牧で本当に楽になるのは、全頭が出し入れに慣れて昼夜放牧になった頃ですが、その時期になると今度は牧草収穫が始まります。

花を見ぬ牛と花見をしてをりぬ 牛後

初花の下を下向く牛の群 牛後

道北地方の桜が開花するのは5月10日前後ですが、放牧開始がこれに間に合うと、桜と放牧のコラボした風景が見られます。

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by usiobasan2016 | 2019-05-19 15:33 | 牛後俳句とエッセイ