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うしおばさんの雑記帳

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道北文化集会

今日はダンナの俳句の講演を見張ってきました。

いつかのイタックでの悪夢の二の舞にはならず、ちゃんとプロジェクター動きました!

これで雪華でもイタックでも何でもこいです。

今月のイタックでリベンジする予定でしたが連絡ミスで1年延びてます。

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by usiobasan2016 | 2019-09-08 22:53 | 生活

牛後俳句とエッセイ(第29回) ざらざらと大停電の暁の露

ざらざらと大停電の暁の露  鈴木牛後


(ざらざらとだいていでんのあけのつゆ)


2018年9月6日午前5時すこし前

目覚まし時計が鳴った。


まだ布団から出たくない私は、枕元にあるスマホを開いてツイッターをダラダラ見ていた。

札幌市内や近郊に住む友人が「札幌停電してる」「うちも停電してる」とツイートしているのを眺めて、(札幌の方では停電してるのか~。何か事故でもあったのかな?)と、のんきに思っていた。


ふと、部屋に違和感を感じた。ちょうど日の出の時刻で部屋はうっすらと明るかったのだが、何かいつもと違う。

あ。いつも眠るときに点けている常夜灯(豆電球)が点いていない…。


まさか?札幌から遠いここでも?

電灯のスイッチを入れた。点かない。

停電?まずいな…。ダンナを起した。

「停電してるみたい」


まず頭に浮かんだのは、搾乳ができないということだった。今日は集乳日だ。集乳車が来る午前8時までには搾乳を終わらせなければならない。頭の中はそのことでいっぱいだった。


停電しているので、スマホ以外には何も情報が入ってこない。スマホのネットニュースで地震が起きた事を知った。


この時はまだ事態を軽く考えていて、数分、長くても数時間で停電が復旧するだろうと思っていた。

電気がなければ、牛舎仕事は全くできないし、家にいても家事もできない。

とにかく復旧するのを待とうと、着替えて家で待機することにした。


何もやる事がないのでツイッターばかりしていた。以下、私のツイートである。


《5時49分

うち(道北地方)も停電してます。

搾乳はもちろんできないけど、バルク(牛乳入れて冷やしてるタンク)の牛乳が心配。今日、集乳日だからけっこう入ってる。全廃棄か?集乳時間にはもう間に合わないな。というか全廃棄か?》


《6時28分

断水もしてます。(湧き水をポンプ汲み上げなので)何もできない。牛はまだ放牧地で草を食んでいますが、そのうち牛舎に入れてくれと騒ぎだすでしょう。最近スマホの『らじるらじる』ばかり聞いていたので捨てようと思ってたラジオ捨てなくてよかった。ラジオ聴いてパン食べて牛乳飲むしかやることない。》


この日は木曜日だった。うちは食品のほとんどを1週間分まとめて生協に配達してもらっているのだが、その配達日が水曜日なのだ。冷蔵庫は食品でパンパンだった。焼酎を割るために注文していた炭酸水がペットボトルで段ボール1個分あった。炭酸は沸かせば水になる。


《6時31分

牛が戻ってきた。ヤバいな。》


《7時42分

牛がゲートに集まってしまったので、牛舎に入れました。手で搾るのかと心配してくれる声もありますが、そんな疲れることはしません。じっと復旧を待ちます。電気、水、農協との連絡、集乳車との連絡、全部待ち。下手に牛舎に行くと牛を刺激するのでこういう時は行かない方がいいんです。》


トイレは当時リフォーム前で、汲み取りだった。調理はプロパンガスだ。スマホはトラクターで高速充電できた。まだストーブを点ける時期ではなかったが、もし冬だったとしてもうちには薪ストーブがある。

農家(田舎)ならではの幸いなことが色々あった。


《9時25分

農協職員が来ました。

「今、発電機をかき集めていますが、全道的にこんな状況なので最悪、手搾りという事も……」

げっ……。

ダンナはソファで俳句雑誌を読んで余裕かましてます。》


《11時41

やること無いので、クロヌリハイク作ってみました。》


停電情報野は邯鄲(かんたん)のいづくまで 牛後


《12時32分

停電が復旧しないので、とりあえず牛の飲み水確保のため、ダンナが川にバキューム(尿まきをする機械)を洗いに行きました。これで川から水を汲んでバケツで1頭1頭やるしかありません。搾乳は手搾りすると死んでしまう(比喩)ので、もう少し様子見です。》


牛に汲む石斑魚(うぐい)の奔る(はしる)秋の水 牛後


《12時41分

バルクの牛乳は全廃棄、決定です。乳業メーカーが動いてないとの事。北海道中の酪農家が牛乳を捨てることになるのでは。》


牛の咆哮(ほうこう)熄めば(やめば)螽斯(きりぎりす)の真昼 牛後


集乳車がやって来た。バルクの牛乳を廃棄するのに集めるためだった。川やその辺に流すと環境汚染になるので、町内にあるメガファームの巨大糞尿溜めタンクに入れさせてもらうことになった。


《16時04分

今日は、角川俳句賞の取材で北海道新聞さんが来る予定でしたが、当然来れるはずもなく電話も通じず、と思っていたら、かなり遅れてやって来ました。角川俳句賞の取材はせずに、停電のため牛に水をやっているところを取材して帰りました。》


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19時頃、発電機の順番が回ってきた。

待たせに待たせたが、やっと搾ってやることができた。


《21時53分

搾乳はできました。廃棄するだけですが。》


発電機きゆるると小さく秋灯す 牛後


《22時31分

停電で暇なので(仕事は大変でしたが)ツイッターばかりして、たくさん投稿してしまいました。皆さんお付き合いありがとうございました。アドバイスにあったペットボトルのランタンやってみました。》


この日の夜は、全道各地で天の川が見れるほど星がきれいだったとか。


銀漢(ぎんかん)の氾濫原(はんらんげん)に牛と吾と 牛後


《9月7日 4時51分

電気復旧しました!水も出ます。普通に電気と水を使えるありがたさを噛み締めています。昨晩搾った牛乳を棄ててバルク洗って仕切り直しです。昨日はリツイートと「いいね」を山ほどつけていただいて驚いています。心配してくださった皆さんありがとうございました!》


《17時32分

今回の大停電で思った事。①冬じゃなくて良かった②電気が復旧したら何で気がつくかと思っていたら「充電を始めます」というロボット掃除機の声だった③いくら洗っても何頭かの敏感牛はバキュームの水は飲まない④糞尿の臭いが取れたかバキュームの水を飲んでみる一人の鈍感人間がうちにはいる》


停電翌日の未明、2階で寝ていたら階下から「充電を始めます」という声が聞こえて目が覚めた時は、うれしくて震えた。たった1日の停電だったが、電気のありがたさと、電気なしではできない仕事だということを噛み締めた1日だった。


《9月8日 11時00分

乳業メーカーが操業を再開しました!受け入れ再開です。これ以上バルククーラーの牛乳を棄てなくて良くなりました。良かった良かった。》


この停電で、搾乳を手搾りした農家が、町内で1軒だけあった。(あとの人は疲れるので発電機の順番を待っていたそうだ)

その1軒の農家は、後々まで乳房炎に悩まされて、バルクの乳量が半分以下にまで減ってしまったそうだ。下手にいじったのが良くなかったのかな、と言っていた。

発電機を待っていた農家でも、搾乳を1回飛ばしにしたので乳房炎は出たが、うちでせいぜい4頭くらいで済んだ。


何が正解か分からないものだ。


種火めく月出づ灯らざる街に 牛後


by usiobasan2016 | 2019-09-08 20:35 | 牛後俳句とエッセイ

なつぞらオマージュ写真館

今朝は天陽くんの事でショックを受けながらも、ついにバケットミルカーが登場したか!酪農の機械化も進むんだべな、と、思いませんでしたか?

#なつぞらオマージュ

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by usiobasan2016 | 2019-09-03 10:23 | 酪農

牛後俳句とエッセイ(第28回) 仔牛待つ二百十日の外陰部

仔牛待つ二百十日の外陰部  鈴木牛後


(こうしまつにひゃくとおかのがいいんぶ)


「俳句にすごい言葉使うんだね。ふひひ」


去年の秋のことです。

町役場主催の話し方講座に夫婦で出席した時に、高齢の男性に声をかけられました。直前にダンナが顔写真入りで地方紙に載ったので、すっかり町内では有名人になっていたのです。


その記事は「第64回角川俳句賞」受賞のものでした。


(すごい言葉って『外陰部』のことですか?でも牛のですけど。しかも分娩するときのですけど。なんだこのオヤジは)と、その含み笑いにちょっとむっとしました。


俳句をやらない一般の方なので、文学性など関係なく、この刺激的な単語だけを抜き出して話題にされたのです。


これは「角川俳句賞」を受賞した50句の中で2番目の句ですが、2番目にもってきたのにはダンナの計算があったようです。彼はこの句を作ったときに、これは目を引くに違いないと確信し、効果的な並び順を考えたときに、最初だとあざとすぎると思って、2番目に持ってきたのだと。


50句もあるので、最初の方でインパクトを与えないと、つまらない連作だと思われて終わるからです。(こういう考慮は応募される方の間では常識だと思いますが)


さて、この並び順が功を奏したかどうかは分かりませんが、ダンナは「第64回角川俳句賞」を受賞しました。去年の秋、ちょうど1年前のことです。


2018年8月31日、午後4時半過ぎ。


いつも我が家では、夕方の牛舎仕事は午後5時に始めるので、私は休憩をかねて自宅の自分のパソコンの前で調べ物をしていました。


そこへ、裏口から作業着のままダンナが駆け込んできました。夕方の搾乳の前に、機械を整備していたのです。腰に巻いていた作業ベルトを大急ぎで外し工具を投げ出して、自分のデスクのパソコンの前へ飛んで行きました。


「何?どうしたの?何かあったの?」


「ちょっと、黙って!!」ものすごく焦っているようです。立ったままパソコンで何かを調べ始めました。


そこへ家の電話が鳴りました。

「はい。鈴木です」私が取りました。


「こちら、角川俳句の編集長をしておりますTと申します。ご主人はいらっしゃいますか?」


「ちょっとお待ち下さい。」


「角川俳句の編集長だって!」


その時、私は(まさか?まさか?)心臓がどきどきしてきました。


ダンナは電話に出て「ええ。はい。既発表句だと思います。今調べたんですが……」


何かしばらく話し込んで、電話を切りました。


私「もしかして?!角川俳句賞を受賞したの?!」


毎年、ダンナが応募しているのは知っていました。本人は力試しのつもりで、最終候補に残って選考座談会で講評してもらえたら勉強になる、というくらいの気持ちだったようです。


私は、「角川俳句賞取らないでよ~。取ったら忙しくなって本業に差し障るでしょ。絶対取ったらダメだよ」と、冗談で言っていました。


「さっき作業中に、俺の携帯に電話があったんだけど。角川俳句賞取ったって言うんだ。それで『既発表句は無いですよね』って念を押されて。でも応募した後で気がついたんだけど、既発表句があったような気がして、今調べたら、まったく一緒じゃなくて、固有名詞と語順を変えてた。後で分かってもまずいから、今、正直に言った。ダメかもしれない。」


自宅にかかってきたのは、途中で携帯の通話が切れたから、らしかったです。


「それで、向うは何て?」


「選考座談会は終わったところなんだけど、まだ選考委員の先生方が残っているから、協議してみますって。」


私は「取らないでよ」とは言ったが、もし受賞したのなら大変な事だと、体が震えてきました。5時からの牛舎はどうでもよくなりました。


それから2人で自宅で編集長からの電話を待ちました。体の震えは相変わらず。緊張で喉がカラカラになってきました。


舞い上がりそうになる私に「でもダメかもしれないよ」と、いつものようにドライなダンナ。


そして電話が来ました。「固有名詞と語順が変わってるし、まったく問題はないそうです。受賞決定です!」


えーーー!!


本当に取った、取った、取った!舞い上がる私。冷静な(に見える)ダンナ。


どんなに興奮してても仕事はしなくちゃ。搾乳して(搾乳中は私のマシンガントーク炸裂でしたが)、次の日も牧草作業をしました。なんかふわふわしてましたけど。


贈呈式で東京に行った時、選考委員のО澤さんが言っていました。「あの時は僕も、どうなる事かと思ったよ。最初から選考をやり直しかと。夜の飲み会に遅れちゃうからね」と。



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by usiobasan2016 | 2019-09-01 16:12 | 牛後俳句とエッセイ

鈴木牛後句集「にれかめる」〈特別付録〉難読漢字ガイド

鈴木牛後句集「にれかめる」の
〈特別付録〉「難読(かもしれない)漢字ガイド」を公開します。

オンライン書店や、街の本屋さんで句集を購入された方
(これから購入予定の方)で、
付録のガイドが見たいという方は、どうぞご利用下さい。

画像のダウンロードは、ご自由にどうぞ。

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by usiobasan2016 | 2019-08-29 15:15 | 鈴木牛後広報部

鈴木牛後 第三句集 「にれかめる」

鈴木牛後 第三句集

「にれかめる」

ただいま発売中です。


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新宿の紀伊国屋書店でも並んでいたそうです。

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角川俳句9月号でも広告が載っていました。

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by usiobasan2016 | 2019-08-29 13:13 | 鈴木牛後広報部

牛後俳句とエッセイ(第27回) 牛の餌を狙ふ土用の鴉の眼

牛の餌を狙ふ土用の鴉の眼  鈴木牛後


(うしのえをねらうどようのからすのめ)


北海道を旅行している観光客には大人気の野生動物も、農業を営んでいると時に害獣となります。


特にひどいのがカラス。(カラスは観光客の人気者ではないですが)


牛舎に置いてある配合飼料などの牛のエサを狙う動物で、ネズミは、「ネズミ捕り従業員」の牛舎ネコが退治してくれますが、カラスの侵入は、ネコもただ見てるだけです。自分たちのエサを食べられても見てるだけ。

「おいおい。おまえらのエサだべや」と言いたくなります。


カラス対策にネットを張ったり、「カラスハイレマ線」という商品名のワイヤーを張ったり、首が風でくるくる回るフクロウの置物を置いたり、ホームセンターの害獣対策コーナーにあるグッズを吊ってみたり、いろいろ日々対策を講じていますが、ことごとく見破られて侵入されています。


先日、知人を訪問した際、新しいカラス対策を教えてもらいました。それは、黒いゴミ袋にキラキラテープで顔を大きく書いて(張って)、上の部分だけ止めて、風にひらひらさせるというもの。これはやった事がないので、今度やってみます。


さて、カラスは牛のエサを食べるだけでなく、他にもいろいろ悪いことをします。


ある日、日中に牛の分娩があり、時間がかかりそうだったので、そのまま置いてその場を離れた時のことです。戻ってみると、カラスが母牛のしっぽの付け根あたりに止まって、今まさに生まれようとしている仔牛の前足の蹄を突っついて食べているではありませんか!


「ぉこらーーー!!」と追い払いましたが、もう少し遅かったら危なかったです。

幸い仔牛の蹄は再生して何事もなかったのですが。


牛は分娩した後に後産(胎盤)を排出しますが、それもカラスに狙われます。酪農家さんによっては、後産はバケツにフタをして取っておいて、後で地面に埋めるという人もいますが、うちでは面倒くさいので、そのまま尿溝(糞尿をためておく溝)に落としたままにします。すると、カラスが引っ張り出して、牛舎の通路が事件現場のような惨状になります。


酪農家さんにはよくある事ですが、うちでも家庭の生ゴミはバーンクリーナーに捨てます。バーンクリーナーとは、尿溝に設置してある鉄製の機械で、糞尿を堆肥盤(糞尿をストックしておく場所)までベルトコンベアーのように運ぶものです。その生ゴミをカラスが狙います。


バーンクリーナーのエレベーター(エレベーターという名称ですが形状はエスカレーター)の上に止まって、流れてくる糞尿に混じった生ゴミを突っついているのを見ていると、まるで回転寿司でお気に入りのネタが回ってくるのを待ってとサッと取るオヤジのようです。


あとは、牧草ロールのラップを突っついて穴を開けます。ラップサイレージは穴があくと、そこからカビが生えて、ひどく劣化するのです。カラスの目的は、太陽の熱で暖められたラップフィルムの上に止まった虫です。


このラップに穴を開けるのと、後産を狙うのは、キタキツネも同じです。

観光客がキタキツネと呼ぶこの動物、農家は憎しみを込めてキツネと呼びます。


キツネもひどいです。迷惑千万ですが、広い放牧地のどこに住んでいるのか分からないので、有効な対策もとれないまま、わがもの顔でひとの敷地内を闊歩しています。


最近ついにアライグマも道北地方にまで進出してきました。アライグマのひどさは、キツネの比ではありません。近所の畑で見かけたと聞いて、町の害獣捕獲講座に夫婦で出席して、ワナの資格を取ってきました。


ある日、うちの家庭菜園のマルチビニールにアライグマらしき足跡があり慌てました。そして、ワナを町から借りて仕掛けました。


毎日毎日、かかってないか見に行くのですが、まったく何事もなく数日が過ぎました。そしてある日ついに何かがかかっている!と、ドキドキしながら見に行くと、我が家の牛舎ネコ(しかも一番のビビリ)が入って、ビビリまくっているだけでした……。


その後も、キツネやカラスではなさそうだという、ネコのエサの荒らされ方をして、アライグマを疑ってワナをしかけましたが何も入らず、結局姿も見ず、謎の被害で終わりました。


さて、害獣といえばエゾシカ(農家はシカと呼ぶ)もひどいですが、長くなるのでシカとクマの話は後日、別に書きます。


あと、これは害獣には該当しませんが、牧草収穫していると、トンビが何羽もやってきます。遠くからトラクターの音を聞きつける能力はすごいものがあります。狙いは、草を刈ったことであらわになる、隠れていたヘビや虫や小動物です。


トンビは、作業中ずっと上空を旋回しています。ゆっくりトラクターに沿って飛ぶので、作業しながらトンビの腹が見れます。

そして、すっと下りたと思ったら、ぱっと飛び上がります。トンビの足の爪にヘビがうねうねしています。捕獲の瞬間です。


ある日、ダンナがモアコン(牧草を刈る機械)で、ウサギをひっかけてしまったそうです。(ものすごく後味が悪かったと言っていました)そのウサギもトンビがさらっていきました。


草刈のあとの屍肉や鳶の空 牛後


これはトラクターの話ではないのですが、数年前に自家用車でヘビを轢いてしまったことがあります。「あっ!」と急ブレーキをかけ後ろを振り返るとヘビがのたうち回っていました。

その瞬間!トンビが急降下し、そして急上昇し、持ち去りました。トンビ…すごい…。


今、二番牧草の収穫の真っ最中です。

今日もトラクターからトンビの腹を眺めています。


鳶の空深くえぞにう立ち上がる 牛後

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by usiobasan2016 | 2019-08-25 12:57 | 牛後俳句とエッセイ

牛後を探せ!

牛後を探せ!

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by usiobasan2016 | 2019-08-21 14:09 | 酪農

牛後俳句とエッセイ(第26回) 発情の声たからかに牛の朱夏

発情の声たからかに牛の朱夏  鈴木牛後


(はつじょうのこえたからかにうしのしゅか)


牛は色々な場面で鳴きますが、一般の方が思うほど、いつもいつも鳴いている訳ではありません。


一番激しいのは、やはり発情の時。次に水が出ない時。そして、いつもと違う何かが起こった時(繋ぎ飼いの冬の時期にチェーンが外れて牛が通路をうろちょろしてるとか)くらいです。


美味しくない牧草が配られた時は、鳴くというより、ブーイングが起こります。低くくぐもった声で「ぶーんぶーん」と言っています。まさにブーイング。


昔ダンナが実習に行っていたK牧場で、牛が激しく鳴いていたので、こりゃ発情だろうと、人工授精のために獣医さんを呼んだそうです。そして診てもらったら、発情ではないと言われました。よく調べたら、ウォーターカップ(水が出るところ)が故障して水が飲めなかっただけだったとか。


教訓。

牛が激しく鳴いてても、1頭だけだと発情を疑ってもよいが、並んだ2頭が鳴いていると、まずウォーターカップの故障を疑え。

(ウォーターカップは2頭に1個配置されている)


さて、放牧していると牛の発情がよく分かります。というのは、発情の牛がすべて鳴くという訳ではなく、分かりやすく鳴いてくれる牛もいますが、静かに発情がきている牛もいるからです。


そのような牛でも、放し飼いにしていると、お互いにメス同士で背中に乗り合うので発情が分かるのです。

なぜこんな行動をするかというと、オス牛に「ここに発情のメスがいるよー」と教えるためだといわれています。メスだけの群れなのに、虚しいですね。


牛啼いて誰も応へぬ大夏野 牛後


オスの牛をメスの群れに交ぜて放牧する、もしくは、メス牛を繋がれているオス牛のところに連れて行って、本交(本当に交尾)させるのは、今ではごく少数派になってしまって、ほとんどが人工授精になってしまいました。


この人工授精、ほとんどの酪農家さんは獣医さんや人工授精師さんに頼むのですが、うちではダンナが自分で授精しています。自分の牛だったら、授精師免許がなくても授精してよいのです。


自分で授精をしようと思ったきっかけは、放牧期間中だと、獣医さんを待つのに発情の牛だけ牛舎に留守番させることになるのですが、1頭だけ置いておくと「置いていかないでーー」と鳴いて鳴いて。その声を聞いているこっちが切なくなるのです。


そしてダンナは、人工授精の教本とビデオを取り寄せ、独学で技術を修得しました。


修得したといっても最初から上手くいったわけではなく、始めた頃は時間ばかりかかるし失敗するし、しっぽを持って隣で手伝っている私は嫌でした。だって上手くいかないと、ダンナがだんだんイライラしてくるんですもん。


「同じ人間なんだからできないことはないべ」と、謎の自信をみなぎらせていましたが、

「実際に上手くいってないしょや」と牛の背中ごしに言い争ったりして。


紫陽花や妻のときどき遠くゐて 牛後


そして受胎率も下がり繁殖成績も下がりとさんざんでしたが、我慢してずっと継続していると、今では繁殖成績はかえって全道平均を上回っています。これは腕が上がったのもありますが、獣医さんは日中しか来てくれないのに、自分だといつでも発情のタイミングを逃さず授精できるからかもしれません。


現在では、自分ひとりで授精できるように、しっぽを紐で固定するという工夫をして、私のしっぽ持ちの仕事もなくなりました。


牛舎のホワイトボードに『ローラAI』(AI=人工授精)と書いてあるのを見ても、気持ちが重くなることはもうありません。


やれやれ。


扇風機の振れる両極にて笑ふ 牛後


獣声のけおんと一つ夏果つる 牛後


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by usiobasan2016 | 2019-08-18 12:56 | 牛後俳句とエッセイ

牛後俳句とエッセイ(第25回) 電気鞭音なく振るふ青葉騒

電気鞭音なく振るふ青葉騒  鈴木牛後


(でんきむちおとなくふるうあおばざい)


「ノンバーバルコミュニケーション」という言葉を知っていますか?


私がこの言葉を初めて知ったのは、『人は見た目が9割』(竹内一郎著)という本を読んだ時でした。


読む前はタイトルから想像して、人は容姿や服装といった外見が大事だという話なのかと思っていたのですが、コミュニケーションというのは言葉で伝わることは7パーセントで残りは言語以外で伝わるという内容でした。これを「ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)」というそうです。


言葉以外のもの、たとえば、表情、顔色、声のトーン、話す速度、ジェスチャーなどの方が、言葉よりよっぽど人に伝わるという内容でした。

怒った顔で「全然怒ってないよ」と言うのと、笑った顔で「怒ってるよ」と言うのでは、どちらが本当に怒っているのかは一目瞭然ですよね。


これを読んだとき思いました(私がいつも牛とやっていることだ。牛と人間はノンバーバルコミュニケーションでしか交流できないもの。でも人間と人間も9割はそうなんだな)と。


さて、牛にも表情や感情があります。注意深く見ているとだいたいわかります。そして牛の方も、人間のしゃべる言葉の意味は分からないようですが、声の調子や強さ、あるいはジェスチャーや態度で、こちらの気持ちがだいたいは分かっているようです。


搾乳の時、寝ている牛を起こすのに「起きなよ~」と話しかけながらお尻を蹴飛ばしたりしますが、放牧期間中だと歩き疲れてなかなか起きないことがよくあります。ノンバーバルコミュニケーションが通用しない時です。


そういう時は、最終兵器-電気ムチを使います。電気ムチといってもムチのような形ではなくスティック状で、ボタンを押すと先っぽに電気が通るというものです。


使うと言っても実際に牛に当てるのではなく、見せるだけなのですが、一度でも電気ムチに当たったことのある牛は、見ただけで立ち上がります。それでも立ち上がらない牛には、ボタンを押して通電の音を聞かせます。この「キーン」という超音波のような微かな音が、牛を緊張させすぐに立ち上がらせるのです。効果抜群です。


牛側からのノンバーバルコミュニケーションで一番大事なのは、病気の兆候を感じ取る事です

牛は「昨日からお腹が痛いんだけど」とか、「体がだるいんだけど熱でもあるのかな?」と言ってくれませんから、起き上がり方が変とか、ずっと寝てるとか、餌をすぐに食べないとか、ちょっとした違和感を感じとるのが大事なんですね。


春、放牧地に牛とタンポポの写真を撮りに行った時のことです。ローラという名前の牛がタンポポの側で寝ていたのでモデルになってもらおうと近づいてスマホで写真を撮ろうとしました。すると寝たままでしたが、西川きよしさんほどに目をひんむいて緊張してしまいました。放牧地にいつもは来ない人間が来て、変なものを向けて写真を撮っているからでしょうか。しかしその後、牛舎でローラを見かけても、いつもいつも目をひんむいているので、「この牛はいつもこんな顔なの?」とダンナに聞いたら「ローラはいつもこうだよ」と言われました。いつもこうだったら、いつ緊張しているのか分からんべや。まったく表情の読めない牛です。


畜生と言はれて牛の眼の涼し 牛後


さて、人間側からのノンバーバルコミュニケーションの話です。

仔牛に哺乳する時は、「ごはんだよ~。お母さんが来ましたよ~」などとネコナデ声(ウシナデ声?)で話しかけていますが、仔牛はミルク欲しさに必死ですから全然私の言う事は聞いていません。そして成長したらお母さん(私)の事はすっかり忘れてしまいます。でも離乳してすぐの頃だったら、ダンナに対する態度と私に対する態度が明らかに違うので、まだ「ミルクをくれる人」という認識はかろうじて残っているのではないかと思います。


何年も前の話ですが、大阪から実家の母が遊びに来て搾乳を見学していました。

「間に入るよ~。搾るよ~」と牛を触りながら優しく話しかけている娘(私)を見て、

「あんたは動物に優しいね。気持ちが優しいんやね」と嬉しそうに言いました。私が「ちゃうねん。無言で突然、牛と牛の間に入ったら、びっくりして蹴られるから、危険防止のために声をかけてるねん」と言うと複雑な顔をしていました。『優しい娘』という幻想を抱いていたかったのですね。

でもこれは、危険防止ということもありますが、なるべくリラックスしてたくさん牛乳を出してもらうために優しく話しかけているという側面もあるのです。


さて就農したばかりの頃です。うちのダンナは今の見た目からは想像できないかもしれませんが、けっこう短気で、すぐ怒っていました。牛に蹴られたり踏まれたり、尻尾で叩かれたりすると「何すんだ!このやろー!」とキレていました。私はその怒声が嫌で嫌で。ビクッとするし、自分が怒られているような気分になるので、「お願いだから、牛に怒鳴るのはやめて」と言っていました。20年近く言い続けたおかげで、ダンナも辛抱強くなり、今ではぐっと堪えて全然怒鳴らなくなりました。


現在、我が家では牛に怒らないし、のんびり搾乳しているので、酪農ヘルパーさんに「鈴木さんの牛はみんなおっとり穏やかですよね」と言われます。


よその農家さんで、チャカチャカせわしなくしている家は、やっぱり牛も落ち着きがないそうです。いつも緊張していて、ちょっと人間が動くとビクッと立ち上がるとか。


もう退職されたベテランヘルパーSさんの話です。飼槽をプッシャー(餌押し)で掃除する時、「足……足……足……」と、足を投げ出して寝ている牛たちに声をかけながら、残った牧草を押していました。牛も声をかけられると足を引っ込めていましたから、言っている意味が分かるのかと一瞬思いましたが、きっと足をプッシャーで押されるから引っ込めていたんですね。


牛は放牧地から牛舎に帰って来たら、自由席なので好きな場所に入るのですが、最後までなかなか席に入らない牛もいます。そういう時は、ダンナと私と2人で挟み込んで、誘導するのですが、もう牛が入っているのに割り込もうとしたりすると、「違う!」と言います。すると、牛はピタッと止まります。そして空いている席があると、「そこ!」と指で指し示します。すると、スッと入ります。この2つは、声の強さと単語の長さはほとんど同じなのに、牛が違う反応をするのです。もしかして人間の言葉が分かるのでは?と思う瞬間です。


以前ベテラン放牧酪農家のIさんが「うちの母ちゃんは指だけで牛を動かせる」と言っていたのを聞いたことがあるのですが、私もついにその域に達したのかと、ちょっとだけ得意になったりします。


息子がまだ小学生だった頃のことです。放牧地への牛追いを手伝わせていました。息子が群れの真ん中に入り前半の牛を追い、私が最後尾につき後半の牛を追っていた時のことです。それまで歩いていた牛たちがピタッと立ち止まり、それ以上行かなくなりました。「はい、はい。行きなよ~」と声をかけてもピクリとも動きません。行かないどころか緊張して怯えています。どうしたのかと前の方を見ると、息子が奇声ともとれるような歌を歌いながら牛追いのスキーストックを両手に高くかかげて、ひょっこりひょっこりと踊っていました。


こりゃ牛も行かんわな。


群といふ牛の塊夏深し 牛後


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by usiobasan2016 | 2019-08-04 08:59 | 牛後俳句とエッセイ